とびひ(伝染性膿痂疹)とは?原因・症状・治療法を詳しく解説!
はじめに
夏になると子どもに多く見られる皮膚の病気のひとつが「とびひ」です。医学的には伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)と呼ばれます。
赤くただれた発疹や水ぶくれができ、かゆみを伴いながらどんどん周囲に広がっていくのが特徴です。
暑さの残る9月、10月でもまだまだ患者様は多いです。
「そのうち治るかな」と放置してしまうと、症状悪化や感染を広げる原因となるため、正しい理解と早めの対応が大切です。
今回は、日本皮膚科学会のガイドラインを参考に、とびひの原因から治療法、予防の工夫までをわかりやすく解説していきます。
とびひの原因菌
とびひは細菌による感染症です。主な原因菌は以下の2種類です。
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黄色ブドウ球菌
皮膚や鼻の中などに存在することが多い菌で、健康な人の皮膚にも常在しています。水ぶくれ(水疱)をつくりやすい性質があります。 -
A群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)
のどの風邪や扁桃炎の原因にもなる菌です。皮膚に感染すると、厚いかさぶたを形成しやすいのが特徴です。
皮膚に小さな傷や虫刺され、湿疹などがあると、これらの菌が入り込み感染を起こします。
特に子どもは皮膚バリアが弱く、またかゆくて掻いてしまうことが多いため、感染が広がりやすくなります。
とびひの種類と症状
とびひは大きく分けて 水疱性膿痂疹 と 痂皮性膿痂疹 の2つのタイプがあります。
1. 水疱性膿痂疹
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原因:黄色ブドウ球菌
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症状:小さな水ぶくれ(水疱)ができ、それが破れるとジクジクしたただれになります。
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かゆみが強く、掻くと他の部位へすぐに広がるのが特徴です。
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主に子どもに多く、夏場によく見られます。
2. 痂皮性膿痂疹
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原因:溶連菌が関与することが多い
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症状:皮膚に厚い黄色〜褐色のかさぶた(痂皮)ができるタイプ。
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発熱やリンパ節の腫れ、倦怠感を伴うこともあり、全身症状を伴いやすいのが特徴です。
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比較的重症化することがあるため注意が必要です。
とびひの診断
診断は皮膚の状態を診察すればほとんどの場合可能です。とびひは特徴的な皮疹を示すため、視診で判断できます。
必要に応じて、皮膚の膿やかさぶたから菌を培養して、どの細菌が原因か、どの抗菌薬が有効かを調べる検査を行うこともあります。
特に抗菌薬が効きにくい耐性菌(MRSAなど)が疑われる場合に重要です。
とびひの治療
1. 抗菌薬による治療
治療の中心は抗菌薬です。
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軽症の場合:抗菌薬入りの軟膏(外用薬)を患部に塗布します。
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症状が広範囲に広がっている場合や発熱を伴う場合:抗菌薬の飲み薬(内服薬)を併用します。
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重症例や耐性菌が疑われる場合:培養検査で菌を特定し、それに合った抗菌薬を選びます。
2. 皮膚の清潔保持
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毎日石けんを使って患部をやさしく洗い、清潔に保つことが大切です。
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汗や汚れを放置すると菌が増えるため、入浴やシャワーは有効です。
3. かゆみ・炎症への対応
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強いかゆみがある場合には抗ヒスタミン薬を併用することもあります。
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湿疹やアトピーが背景にある場合には、そちらの治療も並行して行うことが重要です。
とびひの日常生活での注意点
とびひは非常に感染力が強い病気です。家族や学校、保育園などに広がらないようにするため、以下の点に注意が必要です。
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タオルや衣類の共用は避ける
家族で同じタオルを使うと感染が広がる可能性があります。 -
爪を短く切る
掻き壊すことで症状が悪化したり、他の部位にうつしたりします。 -
登園・登校について
症状が広がっている場合は、学校保健安全法の基準により登園・登校を控えるよう指導されることがあります。治療を開始して症状が改善すれば登校可能です。 -
ガーゼや絆創膏で覆う
患部を覆うことで他の人への接触感染を防ぐことができます。
とびひを放置するとどうなる?
とびひは見た目以上に軽視できない病気です。放置してしまうと…
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全身に広がり、かゆみや痛みでつらくなる
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二次感染(別の菌による感染)が起こる
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まれに腎炎などの合併症につながる
特に溶連菌による痂皮性膿痂疹では、急性糸球体腎炎といった腎臓の病気を引き起こすことがあるため、早期の受診と治療が欠かせません。
とびひの予防法
1. 皮膚を清潔に保つ
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毎日の入浴で汗や汚れを落とす
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特に夏場は汗をかいたらシャワーを浴びる習慣をつける
2. 虫刺されや湿疹のケア
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掻き壊した傷口から菌が入りやすいため、早めに治療することが重要です。
3. 手洗いの徹底
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石けんでの手洗いは、自分や家族への感染を防ぐ基本です。
4. 爪の管理
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爪を短く清潔に保つことで、皮膚を傷つけにくくなります。
お子さんのとびひチェックリスト
「これってとびひかな?」と迷ったとき、以下のチェックリストを参考にしてください。
✅ 水ぶくれや赤い発疹が、かゆみとともに広がっている
✅ 掻いたところから別の場所にも同じようなブツブツが出てきた
✅ 発疹の表面が破れてジクジクしている
✅ 黄色や褐色の厚いかさぶたがついている
✅ 発熱や元気のなさを伴っている
✅ 家族や兄弟にも似た症状が出てきた
→ ひとつでも当てはまる場合は とびひの可能性があります。特に発熱や全身のだるさを伴うときは早めに皮膚科を受診してください。
保護者の方が気をつけたい生活チェックリスト
治療中や予防のために、日常で注意していただきたいポイントです。
☑ タオル・衣類は家族で共用せず、毎日清潔なものに替える
☑ 爪を短く切り、かかないように声をかける
☑ 患部はガーゼや絆創膏で覆い、直接触れないようにする
☑ 毎日シャワーや入浴でやさしく洗って清潔に保つ
☑ 学校・園への登校・登園は、医師の指示に従う
☑ 虫刺されや湿疹を放置せず、早めに治療する
まとめ
とびひは伝染性膿痂疹と呼ばれる皮膚の細菌感染症です。
治療の基本は抗菌薬と清潔保持。放置すると全身に広がったり腎炎などの合併症につながることもあるため、早期受診が大切です。
「かゆみが強い」「ブツブツやかさぶたが広がっている」といった症状がある場合は、自己判断せず、当院まで相談してください。
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